2004-01-01から1年間の記事一覧

 第三巻 一進一退

ジャコバン派の台頭、ミラボーの死、ルイ16世の逃亡・逮捕の模様を事細かに。P154(中央公論社「世界の名著」シリーズ37) 選良は才能を前提とし、人民は素朴で根づよい本能の力をもつ。中間精神にはそのどちらもが欠けている。この精神は、人が高くもなく低…

ジョセフィン・テイ「時の娘」②

高校の頃、歴史の教師がひどく熱く語っているのを聞いて読んでみた高木彬光の「成吉思汗の秘密」には、一時相当いかれていて、ちょうどその頃だったか、前だったか後だったかNHKで放送していた「武蔵坊弁慶」で静御前を演っていた麻生裕未のことを好きになっ…

「語り・物語・精神療法」北山修・黒木俊秀編著

北山修が中心となって立ち上げた日本語臨床研究会の第九回大会の発表の一部と症例検討会の模様を収めた本書。なんといっても白眉は神田橋條治参加のもとに行われた症例検討会ライブ。サイコセラピストを目指す人(私は違いますが)なら必携らしい「精神科診…

ジョセフィン・テイ「時の娘」①

このところちょいと固めの活字ばかり目にしてきたので気楽なものを、とひらめいて手にしたこの本。頭の片隅に、これってアームチェア・ディテクティブならぬベットルーム・ディテクティブで、しかも歴史的事件を扱っている、みたいなことがあったのは確かな…

第二巻 新生フランス

フランス革命に登場する人物って王室を除くと、ロベスピエールとかミラボーくらいしか思い浮かず、それだってこの本読んでいてはじめて、ミラボーなあ、ミラボーミラボー・・・・言われてみればそういう名前を聞いたことあるなあ、くらいで、あ、あとラファ…

エスあるところに・・・

昨日の後半部分に<“それ”に拘り続けていく気力>などと、それ、に “” をつけましたが、そこらへんは別にこれといった他意はなく、単に、人それぞれの気になるポイント、程度の意味で書いたつもりでした。でも、よく考えてみると、というか、思い付きですが…

永井均「私・今・そして神 〜開闢の哲学」

「本」という雑誌に連載されていた「ひねもすたれながす哲学」を大幅加筆訂正してまとめた講談社現代新書の一冊。タイトルはもとのほうがいいと思う。著者と編集とどっちの意向だろ。講談社現代新書シリーズ全体の新カバーも激しく萎える。どっからどうみて…

第一巻 革命のはじまり

「シービスケット」にはここ最近あまり読んでなかった歴史読み物への興味も呼び覚まされて、いきなりだがミシュレなんぞを読むことにした。まだほんのさわり程度しか読んでないけど、現代風な目から見るとどうしても、面白いんだけどおしいなあ、という感想…

神田神保町古本祭にて

獲得した獲物●木田元・竹内敏晴『待つしかない、か 〜 二十一世紀 身体と哲学』春風社 ハイデガー、メルロ=ポンティの翻訳でおなじみの哲学者木田元と、耳の病からことばを失い(かけ)、そこからの回復と演出家としての経験から、ことばのみに囚われない身…

昨日

神田神保町古本祭オフに参加。昼より夕方まで物色。軽く居酒屋で飲んで北の丸公園へ。ちょっと眺める程度のつもりが薄暗い中、妙に落ち着きアルコールを買出しはしゃぐ。途中から記憶がなく、よく荷物を置いてこなくて済んだもんだと思う。タクシーに乗り近…

内田樹「寝ながら学べる構造主義」②

第六章「四銃士」活躍す その四--ラカンと分析的対話 P189 昔、二人のお爺さんが隣り合って暮らしていました。二人とも、頬に大きなこぶがありました。あるとき、一人のお爺さんが山で雨にあって木の洞で雨宿りをしていると、鬼たちがやってきて宴会を始めま…

新宮一成「ラカンの精神分析」

第五章 他者になるということ 4 鏡像段階論 からたぶんこれまで2,3回は通しで読んでいたし、なにか疑問がわいたたんびに引っ張り出してちょこちょこ拾い読みしていたこの本の中の「鏡像段階論」の説明を読んでみた。 人間は生まれてきてからしばらくの間…

内田樹「寝ながら学べる構造主義」①

第六章「四銃士」活躍す その四--ラカンと分析的対話内田の「死と身体」と「他者と死者〜ラカンによるレヴィナス」という装丁もカッコ良い待望の新刊が出て、予習のような意味合いとこれまでの流れがあったので、手軽に読めるこのへんをも一度読んでみた。と…

映画「シービスケット」

原作があまりにすばらしかったから、たぶん期待はずれに終わるだろうと思いつつも原作の余韻でも楽しむつもりでビデオを借りて観たんですが、餡農場つまらなかった。B5のノート一枚に主要関係者の主な出来事をいくつかチョイスして並べただけのような散漫…

前日、前々日あたりからの続き

この2,3日、幼児の空想を取り上げてそれにあれこれ書いてきたけれど、そもそも精神分析において「空想」が問題になってきたのは成人の心理治療に見られた「転移」の説明に必要だったからだろう。ユングはフロイトとはじめて会った時、「転移」を精神分析…

港千尋「記憶」

先週土曜日のこと、所要で埼京線北戸田駅に行かねばならなくなった。戸田橋というのがあるくらいなので川を越えたらすぐだろう、くらいに思っていたのだが思いのほか多くの駅を通過した。そんな感想をもってしまったように北戸田駅なんてはじめて利用する駅…

スーザン・アイザックス「空想の性質と機能」

松木邦裕編「対象関係論の基礎〜クライニアン・クラシックス」収録ここ4,5日の書き込みの流れでやっぱりどうしても読んでおかなかればいけないと精神分析(対象関係論学派)の必須の基礎論文のこれを読んでみた。 どの世界の古典もそうなんだろうけれども…

川嵜克哲「夢の読み方・夢の文法」

はじめにあるあるネタを。この本、2000年に出たときすぐ買ってすぐに読み、夢について書かれた本の中でもかなり面白い本だと感心して、その後も何度か拾い読みしつついろいろ考えの参考にしていたのだが、この四月、やや精神的なバランスを崩した身内に役立…

中井久夫「サリヴァンの精神分裂病論」

『精神科医がものを書くとき・Ⅱ』収録 P140 彼は、精神医学は何よりもまず「対人関係の学」であるという。実在するものは、物理学の場と等価な「場」(field)としての「対人の場」(interpersonal situation)であり、個々人はその一部である。晩年に至って…

ローラ・ヒレンブラッド「シービスケット」

読み出せば一時も気を逸らすことができなくなるジェットコースターノベル。いやノベルではなかった。恐慌に喘ぐアメリカに花開いた冗談にしか思えない奇跡のドラマ、競走馬シービスケットの伝説。 昨年、あちこちでこの本を取り上げているのを目にして気にな…

3年B組金八先生7

初回の2時間スペシャルはでんでんだめでしたね。 シリーズ2をリアルタイムで見ていた人間にとってあれを超えるものを創るのは無理だろうと思ってたところ、ほとんど奇跡的なテンションを最後まで持続したシリーズ5の大成功によって妙な伝統というか神話と…

和田はつ子「心理分析官」

トマス・ハリス「レッド・ドラゴン」や「羊たちの沈黙」あたりを狙った作品(でしょう、どう考えても)。 キャラの創りに興味を引く逸話があるわけでもなく説明じみた文章がだらだらと書かれているせいかいささか冗長に感じられた。 プロファイリング、って…

松木邦裕「分析臨床での発見」

副題に「転移、解釈、罪悪感」とあって、以前読んだ同じ松木の「対象関係論を学ぶ」というクライン派精神分析の入門書より、より入門書らしい。などと感じるのは、それぞれの概念の説明にごく簡略な骨格のみとはいえ一つ一つ臨床素材があげられているからか…

マキャモン「ブルーワールド」

マキャモン唯一(らしい)短編集。 虫系の話はニヤリとさせられる。 その他にもいろいろ毛色の変わったタイプのものが集まっていてなかなか楽しかった。 短編集といいながら短めの長編とでもいってもよさそうなタイトル作品はグッときてホロっとする恋ばな。…