神田神保町古本祭にて

獲得した獲物

木田元・竹内敏晴『待つしかない、か 〜 二十一世紀 身体と哲学』春風社
ハイデガーメルロ=ポンティの翻訳でおなじみの哲学者木田元と、耳の病からことばを失い(かけ)、そこからの回復と演出家としての経験から、ことばのみに囚われない身体と身体とのコミュケーションの微妙な襞をえぐり続ける竹内の対談。図書館で借りて読んだのだが、あまりの面白さに手元に置いときたいと買った。田村書店均一棚。500円


●M・フーコー編 岸田秀・久米博訳『ピエール・リヴィエールの犯罪』河出書房新社
十九世紀フランスで起こった殺人事件に関する裁判書類、犯人の手記、当時の新聞記事等とフーコーらによる論評。前から気になってた本。これも田村書店の均一棚にあって、あそこにあると買っとかなきゃ、という気についなってしまう。800円


●霜山徳爾『仮象の世界』思索社
心理療法家。V.E.フランクル「夜と霧」の翻訳者。美文調と言うんですか、よくわからないが古臭い文体が嫌われたらしく最近女性の新訳で出た。どんな文体かというと「仮象の世界」はこんな感じ。

この世に生まれ、流れ去っていく「人間」に関する、この心理学的、人間学的な省察を----それはむしろ呻吟語というべきであろうが----一つの緩徐調(アダージョ)でもって始めるのを許されたい。/----いつか、人間の生涯には、夕づけて夏がかすかになりやみ、寂滅(ほろび)の静かな歌がきこえてくるようになる。そして、その苦悩の暗緑色の葉が、あえかにもみじするのを見て、やがて訪れるはるかな朔風の内にひそむ、低い慟哭を聞くようになる。また高原の野の草が、少しも人間のあやまちをいわず、短い夏を享けに享けているのに対して、生の方は、重い潮騒のような憂愁と倦怠となって、その長い、苦渋にみちた夏を過去におしやるようになる。そして寄り添った影のような形姿も消えていく。

どうでしょう。神田古書センター四階梓書店1000円


●山中康裕・山田宗良編集『分裂病と生きる』金剛出版
精神科医加藤清、神田橋條治、牧原浩の鼎談。この本ではそれほど活躍していないけれど、「たましい」の山中と、名人・神田橋が出ているのでつい買ってしまった。神田橋については最近別の本でもかなり面白さを発揮してたのがあるのでそれはまたここで取り上げたい。明倫館書店1500円


●G.M.エーデルマン 金子隆芳訳『脳から心へ 〜心の進化の生物学』新曜社
ノーベル医学生理学賞受賞者による<生物学の名において心とからだをリンクするという探査ゲーム>(ウムベルト・エーコ)。港千尋の「記憶」の参考文献に取り上げられてたけど新刊本屋ではすでに買えず探していたのがいいタイミングで手にはいり、この日、一番の収穫。明倫館2700円


牛島定信・館直彦責任編集『境界例 〜パーソナリティの病理と治療』(思春期青年期ケース研究2)岩崎学術出版社

中で症例をあげている藤山直樹のだけジュンク堂で立ち読み、いつか機会があったら手に入れてやろう、と思ってたら機会が来たっぽかったので買った。精神分析を受ける機会があったら一番この人にやってもらいたい気がする。北山修も捨て難いが。明倫館2100円


飲みすぎて体調崩したこともあるししばら酒断ちして緊縮しなさい。