エルモア・レナード「五万二千ドルの罠」

十年前、京王線千川の駅に近い甲州街道沿いのセブン・イレブンで文春文庫のレナード「ミスター・マジェスティック」を買ったままほっといたのを今年んなってからなんとなく思いついて読んだ。なんで、またそんなのを買う気になったのかいまひとつ覚えがないのだが、コンビニで文庫本なんか買ったことなど、たぶん、後にも先にもそれきりだったので、その類の外国作家の本を買った、ということだけはよーく覚えていた。

その後、タランティーノが「ジャッキー・ブラウン」で使ったり、「ゲット・ショーティ」がそうだったりと、映画化したおかげでレナードレナードと名前はよく聞くようになったけれども、それがあのときコンビニで買った本の著者とはあんまり結びついていかなくって、つい最近までエルモア・レナードジェイムズ・エルロイを混同していたところもあった。

そこへ、ちょっと手短に一本読みたい熱、が高まったある日、あまり厚くもない「ミスター・マジェスティック」が出てきた。読んでみると、けっこう面白い。ものすごい、というほどではないけれど、なんか飄々としたかっこよさというかユーモアといか感じられるし。だもんだから古本屋なんかにいって少しだけ注意するようになると、「ホワイト・ジャズ」とかも話題んなったよなあ、と思ってたら、それはジェイムズ・エルロイだとわかり、じゃあ、とエルロイの「ブラック・ダリア」を読んだら、こちらはずいぶん重たくて全然レナードとは違ってた。

今ぼんやり思い出したけど、たしか、週刊誌の書評かなにかを立ち読みしていたらすぐそばに書評で取り上げられていたこの本があった、んだったような気がする。

ジャッキー・ブラウンからもずいぶんたったせいか、割とレナード本って100円コーナーに落ちていることがあって、文春とか角川の文庫で7,8冊買ってある。この「五万二千」は最近近所で150円で手に入れ視界に入るところにおいてあって目障りだったので読んでしまうことにした。「ミスター・マジェスティック」、「キルショット」(これはサンシャインの地下でやってた古本市にて400円で買った単行本)、「スイッチ」(こいつは秋葉原の書泉の近くの電気屋がなぜだか売ってた100円コーナーで買った今はなきサンケイ文庫)についでレナード四本目。

今まで読んだのと同じく、悪漢のたくらみに巻き込まれてく一般市民、とその反撃、みたいな構図。パターンといったらパターンなんだけど、それが面白い。レナード・タッチ、と言われているらしい書き方が好きなのは私もだけれど、それ以外に、農業とか鉄筋工とか船乗りとか機械部品製造業とか、妙にコアな仕事の妙に細かな描写がいいし、それがキャラクターとがっちり結びついているから無駄に書いているようには見えない。この「五万二千ドルの罠」だと、そこに描かれている職柄がお話にもけっこう関わってきていて、にやりとさせられた。ただ、ちょっとそのアイデアの収め方に無理がある感じ。そこでそんな手にはひっかからないんじゃないの、といったような。

これまで読んだものは割りと古めのものばかりみたいなので比較的最近の「ジャッキー」原作「ラム・パンチ」あたり、次読んでみようかな。